石橋湛山評論集

石橋湛山評論集~日本防衛論

昭和43年10月5日号「時言」

ソ連の軍隊がチェコに侵入した事件はは、国家の独立と安全をどうして守るかという問題を、改めて考慮してみるきっかけをつくった。我が国でも、佐藤首相がこれを取り上げて、日本の自衛力は足りないと思うと発言している。ソ連軍侵入の経過をみれば、誰でもそれが当然と考えるに違いない。

・・・中略・・・

実際問題として、いかなる場合でも負けない強大な軍隊を持つ事は、日本にとって大変な負担である。おそらく、日本の国力のほとんど全部傾けつくしてみても、及ばない。そんな考え方で国の防衛を考えるのは間違いだ。そこで、他の考え方でいくことが肝心だ。そこに討議の余地が大いにある。この点を、政治家の諸君はよく考えてもらいたい。

・・・中略・・・

重ねて言うが、我が国の独立と安全を守るために、軍備の拡張という国力を消耗するような考えでいったら、国防を全うすることができないばかりでなく、国を滅ぼす。したがって、そういう考え方をもった政治家に託すわけにはいかない。政治家の諸君にのぞみたいのは、おのれ一身の利益より先に、党の利益を考えてもらいたい。党のことより国家国民の利益を優先して考えてもらいたいということである。

人間だれでも、私利心を持っている。私は持っていないと言ったら嘘になる。しかし、政治家の私利心が第一に追求するべきものは、財産や私生活の楽しみではない。国民の間に湧き上がる信頼であり、名声である。これこそ、政治家の私利心が何はさておき追求すべき目的でなければならぬ。そうでないなら、政治家をやめて他の職業に変わるがいい。もしも政治家諸君がこのような心構えを持ってくれたら、国民の政治に対する不信感は払拭され、愛国心もおのずから湧き上がる。言論機関は、このような政治家を声援し、育成する努力を払ってもらいたい。

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