石橋湛山記念財団ホームページ

HOME
石橋湛山賞とは・・・ 受賞記念講演「家計からみる日本経済」
石橋湛山賞とは・・・石橋湛山賞とは・・・
第25回受賞:藤原帰一教授第25回受賞:藤原帰一教授
藤原帰一教授の略歴藤原帰一教授の略歴
受賞の挨拶受賞の挨拶
受賞記念講演受賞記念講演
過去の受賞者過去の受賞者

国際関係は切った張ったの世界、権力闘争の世界ですが、そのままにしておけば共倒れになってしまう世界でもあるわけです。 そこで共倒れにならない限度まで戦争は抑え込もうという観念も生まれてきます。 国際関係を信じるというのは、権力闘争を特徴とする国際関係においても最低限の秩序をつくることができる――そんな考え方ではないか。 石橋湛山翁は、日中戦争前夜においてなお戦争の合理性を疑うことによって、一丸となって戦争に向かう日本でも国際関係について一定の見識を持ったいた人であったといえる。

 この、国際秩序を考えることが本日のお話しです。 題目は「現実主義者の平和構想」、大変大げさな題名ですし、これだけでも「いったい何だ」という方がおいででしょう。 というのも、現実主義という考え方は、普通、平和の構想とはおよそ正反対だと考えられるからです。 戦争は避けられない、それが国際政治の現実だという議論と、いや、そのような世界はいけないのであって、平和を実現する世界をつくるべきだという理想主義、 この現実主義と理想主義がぶつかるところで国際政治の議論が行われてきた――これが戦後日本における国際政治という分野の、一つの特徴だったのではないかと思っています。

 私はこれは間違いだと思ってきました。このように議論を立ててしまえば、ここで言っている現実主義とは、結局ただ現実の追認になってしまう。 また逆に平和主義とは、どうせ実現しそうもない夢物語を語るという理想主義になってしまう。これでは展望が開かれることもありません。

 … 中略。項目では …

 1.資本主義、国際関係の「制度」を信じた石橋翁
 2.手段としての戦争を認めたウェストファリア条約
 3.緩和と強化のサイクル描く戦争規制ルール
 4.平和とは「平和主義」の原則論ではない
 5.軍事的リアリズムからの平和の擁護
 6.民族自決、ナショナリズムを一般化する危険
 7.民主主義の名の下に、必要ない戦争が
 8.理想主義と現実主義を超えて


 ……
 しかしながら、このような散文的でプラグマティックな平和という条件を、平和主義とか地政学とかナショナリズムとか民主主義とかそれぞれに、 場合によっては偏見と理想主義が混ざってしまった、壮大な構想と一緒にして考えてしまう時に、現実には権力の暴走が生まれてしまいます。 そのために、現実主義者――ここでは政治権力の現実をそのままのものとして見るという意味での現実主義者ですが、 現実主義者として平和を語る意味が今なお残されていると考えて、この本を書いたわけです。 これが、日本で語られてきた理想主義とか現実主義とも違うものであるということは、申し上げるまでもありません。 そして、われわれが今とるべき道は、憲法九条堅持と叫ぶことでも、また、逆に憲法改正による平和を期待することでもなくて、 むしろ具体的な紛争の中でどのように選択がありうるのかを考える、地味な作業ではないかというふうに考えております。

 ご清聴ありがとうございました。

『自由思想』101号(2005年11月発刊)に全文を掲載

copyright